カフェラテやカプチーノは、エスプレッソと温めたミルクを組み合わせた飲み物です。エスプレッソの苦味やコクに、ミルクの甘さとまろやかさが加わり、ストレートのコーヒーとは違ったおいしさになります。
この章では、ミルクが泡立つ仕組み、きめ細かい泡を作るスチーミングの手順、ラテアートの基本、そしてカプチーノやフラットホワイトなどの飲み物の違いを整理します。エスプレッソそのものは第17章 エスプレッソを参照してください。
ミルクが泡立つ仕組み
牛乳は、水分のほかに、タンパク質、脂肪、乳糖(ラクトース)などを含んでいます。スチーミングでは、蒸気でミルクを温めながら空気を細かい泡として混ぜ込みます。
泡を支えているのは主にタンパク質です。タンパク質は泡の表面(空気と液体の境目)に集まって膜を作り、泡が壊れにくくなるように働きます。牛乳のタンパク質の大部分はカゼインで、残りがホエイ(乳清)タンパク質です。
脂肪は、泡の形成を妨げる方向に働くことがあります。乳製品の研究誌に掲載された研究では、全乳では乳脂肪が泡のでき方と安定性を下げること、特に 15〜45℃ の温度帯でその影響が大きいことが報告されています。一方で、温度を上げていくと泡は安定しやすくなる傾向も示されています。脂肪の多いミルクはきめ細かい泡を作るのに少し慣れが必要ですが、口当たりのなめらかさと甘い印象を与えるため、多くの店で使われています。
乳糖は加熱で溶けやすくなり、ミルクの甘さを感じやすくします。温めすぎるとタンパク質が変性し、泡が粗くなったり、加熱臭が出たりします。
スチーミングの温度
スチーミングの仕上がり温度は、55〜65℃ 前後がよく使われます。熱すぎると甘さが感じにくくなり、加熱臭も出やすくなります。
INEI の「認証イタリアンカプチーノ」の基準では、冷蔵(3〜5℃)の牛乳 100 mL を、体積がおよそ 125 mL、温度がおよそ 55℃ になるまでスチームし、認証エスプレッソ 25 mL と合わせて、容量 150〜160 mL のカップで提供するとされています。また、使う牛乳はタンパク質 3.2% 以上、脂肪 3.5% 以上の新鮮な牛乳と定められています。
スチーミングの手順
- 冷たいミルクを用意する:ミルクは冷蔵庫から出したての冷たいものを使います。温度が低いほど、空気を含ませる時間を長くとれます
- ピッチャーに注ぐ:ピッチャーの注ぎ口の下あたり(容量の 1/3 程度)までミルクを入れます
- ノズルの水を出す:スチームノズルにたまった水を、空ぶかしして出しておきます
- 空気を含ませる(ストレッチ):ノズルの先をミルクの表面のすぐ下に入れ、蒸気を出します。「チリチリ」という小さな音がする位置で、ミルクの量が少しずつ増えていきます
- 混ぜて温める(ロール):必要な量の泡ができたら、ノズルを少し深く沈め、ミルクが渦を巻くようにして全体を均一に混ぜながら温めます
- 蒸気を止めてから抜く:目標の温度になったら蒸気を止めてからノズルを抜きます。ノズルはすぐに濡れ布巾で拭き、空ぶかしします
- なじませる:ピッチャーを軽く台に打ちつけて大きな泡を消し、回して表面につやが出るようにします
泡の量は、ラテなら少なめ(体積が 1 割程度増える程度)、カプチーノなら多め(2〜3 割程度)を目安にします。
ラテアートの基本
ラテアートは、エスプレッソの表面に泡立てたミルクを注いで模様を描く技術です。きめが細かく、つやのある泡(マイクロフォーム)ができていることが前提になります。
基本の流れは次のとおりです。
- カップを少し傾け、高い位置から細くミルクを注いで、エスプレッソとミルクをなじませます(ベースを作る)
- カップの液面が半分〜7 割程度まで上がったら、ピッチャーの注ぎ口を液面に近づけます
- 注ぐ量を少し増やすと、表面に白い泡が浮かび始めます。ここで手首を揺らしたり、位置を動かしたりして模様を作ります
- 最後にピッチャーを持ち上げ、細い線で模様を切るように注ぎ終えます
代表的な模様は、ハート、リーフ(ロゼッタ)、チューリップです。ハートは揺らさずに注いで最後に切る、リーフは揺らしながら後ろに下がって最後に切る、という違いがあります。
エスプレッソとミルクの飲み物
エスプレッソとミルクを組み合わせた飲み物は、ミルクと泡の量によって呼び名が変わります。ただし、量や比率には国や店による違いが大きく、統一された定義はありません。以下は一般的な目安です。
| 飲み物 | 構成の目安 | 特徴 |
|---|---|---|
| カフェラテ | エスプレッソ+たっぷりのスチームミルク、薄い泡 | ミルクの甘さが主役のまろやかな味 |
| カプチーノ | エスプレッソ+スチームミルク+厚めの泡 | 泡の口当たりが特徴。INEI の基準ではエスプレッソ 25 mL+ミルク 100 mL |
| フラットホワイト | エスプレッソ+少なめのスチームミルク、ごく薄い泡 | ラテより小さく、コーヒーの味が濃い |
| コルタード | エスプレッソとミルクを同程度 | 小さく、コーヒーとミルクのバランスがとれた味 |
| マキアート | エスプレッソ+少量の泡 | エスプレッソが主役。「染み」を意味するイタリア語に由来 |
フラットホワイトは、1980年代にオーストラリアとニュージーランドで広まった飲み物とされています。どちらの国で生まれたかについては、両国にそれぞれ主張があり、はっきりしていません。
植物性ミルク
牛乳の代わりに、オーツ(燕麦)、大豆、アーモンドなどから作られた植物性ミルクを使う店も増えています。植物性ミルクは、牛乳に比べてタンパク質や脂肪の量と性質が異なるため、同じように泡立てても泡がすぐ消えたり、粗くなったりすることがあります。
そのため、各メーカーはコーヒー用に調整した「バリスタ向け」の製品を出しています。これらは、泡立ちやエスプレッソとのなじみを良くするために、油脂や安定剤などを加えて作られています。また、植物性ミルクはエスプレッソの酸と反応して分離しやすいものもあるため、浅煎りの酸味の強いエスプレッソと合わせるときは注意が必要です。
家庭でミルクを泡立てる
エスプレッソマシンにスチーム機能がなくても、ミルク入りの飲み物は作れます。
- ミルクフォーマー(電動泡立て器):温めたミルクに差し込んで泡立てます
- フレンチプレス:温めたミルクを入れ、プランジャーを何度も上下させて泡を作ります
- 専用のミルク泡立て器:温めと泡立てを自動で行う家電もあります
いずれの方法も、ミルクを温めすぎないこと(目安として 60〜65℃ 程度まで)が、甘さを残すポイントです。
まとめ
- ミルクの泡は主にタンパク質が支え、脂肪は泡立ちを妨げる方向に働くことがあります
- スチーミングは 55〜65℃ 前後で仕上げるのが一般的で、熱すぎると甘さが感じにくくなります
- INEI のカプチーノは、エスプレッソ 25 mL と、約 55℃ に温めたミルク 100 mL の組み合わせです
- ラテ、カプチーノ、フラットホワイトなどの違いはミルクと泡の量で、比率は国や店によって異なります
- 植物性ミルクは「バリスタ向け」製品を選ぶと泡立てやすくなります
関連する章とツール
出典・参考文献
- The Certified Italian Espresso and Cappuccino(Istituto Nazionale Espresso Italiano(INEI))
- The influence of temperature on the foaming of milk(International Dairy Journal, 2008)(Kamath ほか)
- Why Does Milk Foam & How Does It Affect Your Coffee?(Perfect Daily Grind)
- Flat white(Wikipedia)