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第IV部 抽出 / 第19章

アイス・コールドブリュー

急冷式アイスコーヒー、水出し、コールドブリューの違いと淹れ方を扱います。

更新日 2026-10-02

冷たいコーヒーの作り方は、大きく2つに分かれます。熱い湯で抽出してすぐに冷やす「急冷式」と、水で時間をかけて抽出する「水出し(コールドブリュー)」です。同じ豆を使っても、この2つでは香りや口当たりが大きく変わります。

この章では、それぞれの仕組みと淹れ方、味の違い、そして水出しで特に気をつけたい衛生面について整理します。

2つの作り方の違い

比べる点 急冷式 水出し(コールドブリュー)
抽出に使うもの 熱い湯 水(常温または冷蔵)
時間 数分 数時間〜一晩
香り 華やかな香りや酸味が出やすい 穏やかで、香りの立ち方は控えめ
口当たり 軽やか まろやかで、重めになりやすい
準備 飲む直前に作れる 前もって仕込む必要がある

急冷式アイスコーヒー

急冷式は、氷を入れたサーバーの上に、ふだんより濃いめにドリップしたコーヒーを直接落として冷やす方法です。海外では「ジャパニーズアイスコーヒー」や「フラッシュブリュー」とも呼ばれます。

ポイントは、湯の一部を氷に置き換えることです。抽出する湯を減らしてそのぶん氷を入れておけば、氷が溶けてちょうどよい濃さになります。

Gota が紹介しているレシピは次のとおりです。

項目 目安
豆の量 15 g(ふだんよりやや細かく挽く)
湯 150 g(約 94℃)
氷(サーバーに入れておく) 100 g
全体の比率 1:16.7(豆 15 g に対し湯と氷で 250 g)

湯の量が少ないぶん抽出が進みにくいので、挽き目を少し細かくして補います。熱いコーヒーが氷に触れてすぐに冷えるため、香りの成分が飛ぶ前に閉じ込められ、華やかな香りや果実のような酸味が残りやすいとされています。

深煎りの豆を濃いめに抽出して急冷する方法は、日本の喫茶店で昔から親しまれてきたアイスコーヒーの作り方でもあります。全日本コーヒー協会の解説でも、フルシティローストはアイスコーヒーに使われる焙煎度として紹介されています。

水出し(コールドブリュー)

水出しは、粗めに挽いた粉を水に長時間浸けて抽出する方法です。浸漬式のひとつで、ポットの中に粉を入れた袋やフィルターを沈めておく器具が手軽です。

基本の作り方(目安)

  1. 粗挽きの粉を用意する(豆 50 g に対して水 500〜600 g 程度)
  2. 粉を不織布の袋や専用フィルターに入れ、容器の水に沈める
  3. 冷蔵庫で 8〜12 時間ほど置く
  4. 粉を取り出し、できあがったコーヒーを冷蔵で保管する

比率を濃くして抽出し、飲むときに水や氷、牛乳で割る「濃縮タイプ」の作り方もあります。

抽出時間についての研究

水出しの抽出時間は、レシピによって 8〜24 時間とさまざまです。Fuller と Rao の研究(2017年)では、水出しコーヒーのカフェインとクロロゲン酸の濃度は、どの条件でも 6〜7 時間でほぼ一定に達したと報告されています。長く浸ければその分濃くなる、というわけではないことを示す結果です。

この研究では、挽き目の違いはカフェインとクロロゲン酸の濃度に大きな影響を与えませんでした。

「水出しは酸味が少ない」は本当か

水出しコーヒーは「酸が少なく胃にやさしい」と紹介されることがあります。しかし同じ研究では、水出しと熱湯抽出で pH(酸性の強さ)に大きな差は見られず、どちらも 5.4〜5.6 程度でした。研究者は、水出しの酸味や味の違いに関する宣伝文句は、少なくともクロロゲン酸の量の違いでは説明できないと述べています。

水出しの味がまろやかに感じられるのは、低い温度では香りの成分の出方や、溶け出す成分のバランスが変わるためだと考えられています。ただし、そのしくみはまだ十分に解明されていません。

ウォータードリップ(ダッチコーヒー)

水出しの一種に、専用の器具を使って水を一滴ずつ粉に落とし、数時間かけて抽出する方法があります。日本では「ウォータードリップ」や「ダッチコーヒー」とも呼ばれ、ガラスの塔のような器具を店頭に置いている喫茶店もあります。

一滴ずつゆっくり抽出するため、浸漬式の水出しとは違った、すっきりとした味になると言われます。器具が大きく時間もかかるため、主にお店で使われる方法です。

ナイトロコールドブリュー

水出しコーヒーに窒素ガスを溶かし込み、ビールのサーバーのような専用の装置から注ぐ飲み物です。細かい泡がクリーミーな口当たりを生み、見た目もギネスビールのようになります。窒素は二酸化炭素と違って水に溶けにくく、炭酸のような刺激は出ません。

豆と氷の選び方

冷たいコーヒーは、温かいときに比べて甘さや香りを感じにくくなります。一方で、苦味や酸味は冷たくても比較的はっきり感じられます。そのため、どんな豆を選ぶかで仕上がりの印象が大きく変わります。

  • すっきりした苦味とコクを楽しみたい:中深煎りから深煎りの豆で急冷式にすると、昔ながらの喫茶店のようなアイスコーヒーになります
  • 果実のような香りを楽しみたい:浅煎りから中煎りの豆で急冷式にすると、香りと酸味が残りやすくなります
  • まろやかで飲みやすくしたい:中煎りから深煎りの豆で水出しにすると、角の取れた味になりやすいです

氷も味の一部です。急冷式では氷がそのまま水になってコーヒーに混ざるため、においのついていない、きれいな水で作った氷を使いましょう。冷凍庫の中で長く置いた氷は、ほかの食品のにおいを吸っていることがあります。グラスに入れる氷も、大きめで溶けにくいものを使うと、飲んでいるあいだに薄まりにくくなります。

衛生と保存

水出しコーヒーで特に注意したいのが衛生面です。熱い湯で抽出する方法と違って、熱で雑菌を減らす工程がありません。

CCS コーヒーの解説では、ペットボトルなどに入れて 30℃ 以上の場所に置いておくと、短時間で雑菌が増える危険があると注意を呼びかけています。家庭で水出しを作るときは、次の点を守りましょう。

  • 冷蔵庫で抽出する:常温で長時間置かない
  • 器具を清潔にする:容器やフィルターはよく洗い、乾かしてから使う
  • 早めに飲み切る:できあがったら冷蔵し、1〜2 日を目安に飲み切る
  • 注ぎ足さない:古いコーヒーに新しいものを継ぎ足さない
  • 持ち歩きに注意する:水筒に入れて持ち歩く場合は、保冷し、その日のうちに飲む

急冷式のアイスコーヒーも、作ったあとに常温で長く置けば同じように雑菌が増えます。作り置きする場合は、冷めたらすぐ冷蔵庫に入れましょう。

まとめ

  • 冷たいコーヒーには、熱い湯で抽出して急冷する方法と、水で長時間抽出する水出しがあります
  • 急冷式は湯の一部を氷に置き換えて作り、香りや酸味が残りやすい方法です
  • 水出しのカフェインとクロロゲン酸は 6〜7 時間でほぼ一定になったという研究があります
  • 水出しの pH は熱湯抽出と大きく変わらないと報告されており、「酸が少ない」という説明には注意が必要です
  • 水出しは加熱による殺菌がないため、冷蔵で抽出し、早めに飲み切ることが大切です

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出典・参考文献

  1. The Effect of Time, Roasting Temperature, and Grind Size on Caffeine and Chlorogenic Acid Concentrations in Cold Brew Coffee(Scientific Reports, 2017)(Fuller, Rao)
  2. Japanese iced (flash brew)(Gota)
  3. コーヒーの達人への道 2017年6月(CCS コーヒー)
  4. 焙煎・配合・粉砕(全日本コーヒー協会)